扶養家族が増えるとき減るとき
健康保険では、被保険者だけでなく、被保険者に扶養されている家族にも保険給付を行います。この家族のことを「被扶養者」といいます。被扶養者として認定されるためには、「国内居住」のうえ、「家族の範囲」と「収入」について一定の条件を満たしている必要があります。
- 被扶養者となるためには、健康保険組合の認定を受けなければなりません。
- 被扶養者の異動があった場合は、5日以内に届出をしてください。
家族の範囲
被扶養者となれる家族の範囲は、法律で決められています。さらに、同居・別居により、条件が異なります。
被保険者と同居でも別居でもよい人
- 配偶者(内縁でもよい)
- 子、孫
- 兄弟姉妹
- 父母など直系尊属
被保険者と同居が条件の人
- 上記以外の三親等内の親族
- 被保険者の内縁の配偶者の父母および子
- 内縁の配偶者死亡後の父母および子

扶養認定日
被扶養者(異動)届および必要書類一式が提出され、健保組合が扶養の事実を認めた日が認定日となります。
ただし、出生においては「出生年月日」、婚姻、退職、退職後の任意継続資格喪失の3つの異動事由については、被保険者が異動事由を証明する書類を添付して提出し、健保組合が受理した場合に限って、「その事実が発生した日」に遡って認定します。
注意
上記異動事由の場合、遡り可能な期間はありますが、事由発生後は速やかに書類を提出してください。遡り可能な期間は事由発生後、被保険者が30日以内に扶養申請した場合に限ります。30日以上遅れた場合は健保組合が受理した日の属する月の初日となります。
扶養削除日
収入超過、その他の理由で被扶養者の資格がなくなった場合は、直ちに「被扶養者(異動)届」を提出します。削除日は健保組合が資格喪失の事実を認めた日となります。
ただし、死亡においては「死亡日の翌日」、就職した場合はその健康保険の「資格取得年月日」、後期高齢者医療制度に該当した場合はその「資格取得年月日」を削除日とします。
- ※被扶養者が就職等の理由により、ご自分で他の被保険者証をお持ちになったにも関わらず、直ちに届出をしなかった場合は、遡って資格が取り消され、当該期間にわたって発生した医療費の全額およびその他給付金を返還していただきます。
届出が60日以上遅れた場合
遅延理由書を添付してください。氏名、記号番号、所属名、部署、届の種類、捺印、遅れた理由を詳細に明記する事。フォーマットは問いません。
- ■認定日は届出の遅延の有無関係なく、出生時認定以外は30日以上、遡って認定する事はできません。
- 例えば、5/10退職し、5/11喪失した妻を5/11付で扶養認定希望。その書類を健保が6/25に受理した場合。
5/11認定は6/11までに健保へ書類必着が条件ですので、5/11認定は不可。最短で受理した月の1日、または書類受理日の認定となります。
収入の基準
被扶養者となるためには、「主として被保険者の収入によって生活していること」が必要で、同居・別居の有無、年間収入により判断されます。
同居している場合 | 別居している場合 |
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対象者の年収が130万円(60歳以上または障害厚生年金の受給要件に該当する程度の障害者は180万円)未満で、被保険者の収入の2分の1未満であること | 対象者の年収が130万円(60歳以上または障害厚生年金の受給要件に該当する程度の障害者は180万円)未満で、かつ、その額が被保険者からの仕送額より少ないこと |
- ※雇用保険の失業給付受給中
失業給付は失業した場合に生活の安定を図ることを目的としています。法による生活保障が行われたうえで、早く適職を得て就職することを目的に支給されていますから、被扶養者として認めることはできません。
ただし、基本手当日額が3,612円(60歳以上・障がい者の方は、5,000円)未満の場合は除きます。
待機期間中については認定しますが、受給開始されましたら被扶養者削除の届出が必要となります。
- ※健康保険の傷病手当金・出産手当金受給中
病気や出産のために一定期間、仕事に就けず、報酬を受けられないときに経済的不安から保護する制度として、支給されるものですから、被扶養者として認めることができません。
ただし、基本手当日額が3,612円(60歳以上・障がい者の方は、5,000円)未満の場合は除きます。
夫婦が共働きの場合は
夫婦が共働き(夫婦共同扶養)の場合は、次のような判断基準によりどちらの被扶養者となるか判断します。
- ※厚生労働省通知(令和3年4月30日付保保発0430第2号「夫婦共同扶養の場合における被扶養者の認定について」)により基準が明確化されました。
- (1)被扶養者の人数にかかわらず、被保険者の年間収入が多い方の被扶養者とする。
- ※年間収入は過去の収入、現時点の収入、将来の収入等から今後1年間の収入を見込んだものとする。
(以下、同様)
- ※年間収入は過去の収入、現時点の収入、将来の収入等から今後1年間の収入を見込んだものとする。
- (2)夫婦双方の年間収入の差額が年間収入の多い方の1割以内である場合は、主として生計を維持する者の被扶養者とする。
- (3)夫婦の双方又はいずれか一方が共済組合の組合員であって、その者に被扶養者の手当等が支給認定されている場合には、その認定を受けている者の被扶養者とする。
ただし、被扶養者の手当等の支給が認定されていないことのみを理由に被扶養者として認定しないことはありません。 - (4)育児休業等の期間中は、特例的に被扶養者を異動しないこととする。
例えば、第1子の育児休業中に第2子の扶養追加をするときは、(1)~(3)により第2子の生計維持関係を判断することとなりますが、被扶養者の地位安定の観点から第1子の扶養は異動しなくても差し支えありません。
育児休業等が終了した時点で改めて生計維持関係を判断して、主たる生計維持者に変更がある場合は被扶養者の異動の手続きが必要です。この異動の事実発生日は、育児休業が終了した日の翌日となります。
「年収の壁」に対する政府の施策について(2023年10月より)
- 参考リンク
「年収の壁」とは
「年収の壁」とは、税金や社会保険料が発生する基準となる年収額のことです。
健康保険等の被扶養者がパートタイマー等で働き、年収が一定以上になると、被扶養者ではいられなくなり、健康保険や国民健康保険等の被保険者となりますが、そうなると社会保険料の負担が発生して、結果として手取り収入が減少する場合があります。
社会保険における「年収の壁」は、企業規模の違い等により、年収106万円と年収130万円の2つがあります。
(出典:「年収の壁」への当面の対応策(厚生労働省))
年収106万円の壁 | 従業員51人以上の企業、賃金月額88,000円以上(年収:約106万円以上)等、一定の条件を満たす場合は、社会保険料が発生。 |
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年収130万円(※)の壁 | 被扶養者の認定基準を満たさなくなるため、条件を問わず、社会保険料が発生。 |
- ※60歳以上または障害厚生年金の受給要件に該当する程度の障害者は180万円
年収130万円の壁に対する対応
被扶養者認定は前年の課税証明書等の確認で行われていますが、人手不足による労働時間延長等に伴い一時的に年収が130万円以上となる場合は、事業主の証明を添付することにより、収入見込額が130万円以上であっても、引き続き被扶養者の認定を受けることができるようになります。
(同一の者について原則として連続2回までを上限とします)
年収106万円の壁に対する対応
社会保険適用促進手当(※)の支給等、労働者の収入を増加させる支援を行った企業に対して一定期間助成が行われます。
※社会保険適用促進手当
短時間労働者への被用者保険の適用を促進するため、非適用の労働者が新たに適用となった場合、当該労働者の保険料負担を軽減するために支給することができる手当です。
社会保険適用促進手当は、給与・賞与とは別に支給するものとし、保険料算定の基礎となる標準報酬月額・標準賞与額の算定対象に考慮しないこととされます。
- ※対象者:標準報酬月額が10.4万円以下の方。
- ※報酬から除外する手当の上限額:被用者保険適用に伴い新たに発生した本人負担分の保険料相当額。
- ※最大2年間の措置。
被扶養者認定における国内居住要件の追加について
2020年4月より、健康保険の被扶養者認定の要件に、国内居住要件が追加されました。日本国内に住所を有していない場合、2020年4月1日以降は、原則として被扶養者の認定はされません。(海外留学等、一定の例外あり)
国内居住要件の考え方について
住民基本台帳に住民登録されているかどうか(住民票があるかどうか)で判断し、住民票が日本国内にある方は原則、国内居住要件を満たすものとされます。
- ※住民票が日本国内にあっても、海外で就労している等、明らかに日本での居住実態がないことが判明した場合は、国内居住要件を満たさないと判断されます。
国内居住要件の例外
外国に一時的に留学している学生等、海外居住であっても日本国内に生活の基礎があると認められる場合は、例外として国内居住要件を満たすこととされます。
【国内居住要件の例外となる場合】
- ① 外国において留学をする学生
- ② 外国に赴任する被保険者に同行する者
- ③ 観光、保養又はボランティア活動その他就労以外の目的で一時的に海外に渡航する者
- ④ 被保険者が外国に赴任している間に当該被保険者との身分関係が生じた者
- ⑤ ①から④までに掲げるもののほか、渡航目的その他の事情を考慮して日本国内に生活の基礎があると認められる者
国内居住者であっても、被扶養者と認められない場合
医療滞在ビザで来日した方、観光・保養を目的としたロングステイビザで来日した方については、国内居住であっても被扶養者として認定されません。
経過措置について
国内居住要件の追加により被扶養者資格を喪失する方が、施行日(2020年4月1日)時点で国内の医療機関に入院している場合、経過措置として、入院期間中は資格が継続されます。
自営業
自営業の方においては、経済的に自立した存在であり、他の者からの収入ではなく、自己の責任と権限のもとで収入を得ることを選択した方ですので、基本的には、ご自身で国民健康保険に加入していただきますようお願い致します。
事業コストの支払いより、身近で重要な自分自身の健康保険の加入ができないということは、社会的通念からみて不合理であると考えられます。
しかし、実際の事業内容から得られる収入が十分でなく、自営業の方の収入基準を満たしている場合は被扶養者として認定できる場合もあります。
被扶養者の異動(変更)があったら
結婚や出産等により被扶養者が増えたときや、就職や別居、死亡等で、それまで被扶養者に認定されていた家族が被扶養者の認定基準を満たさなくなった場合は手続きが必要です。被保険者が扶養の実態がない家族を虚偽の申請により認定を受けたことが判明した場合は、被扶養者の資格を遡って取り消され、当該期間にわたって発生した医療費の全額及びその他給付金を過去に遡及し、返還しなくてはなりません。なお、当健康保険組合では毎年、被扶養者の資格を確認するための検認を行っています。